海の日を皮切りについに夏山シーズンがスタートしました。梅雨明けしてないにも関わらず多くの人でごった返しています。季節の変化で夏を感じるよりも、急に増える人の数で夏山を感じます。
さて、これから8月いっぱいが正念場です。たくさんソフトクリームを売って、がんばるぞと浮かれるはずが・・・。どうしても浮かれられない理由があります。
ここでも何度も書かせてもらっていますが、ある問題にとても頭を悩めています。
それは、到着時間です。
実は、昨年こんなことがありました。事態がようやく収拾したのであえて書かせてもらいます。
到着時間に関しては、若者が増え一昨年より気になっていました。夜の19時を回っても平気で歩いて山頂を目指す人がたくさんいます。富士山登山は夜に登る、私たち北アルプスで暮らしている者にとっては、異常な山です。
あまりに到着時間が遅いので、昨年の秋、横尾山荘さんなどとも相談し、到着時間があまりに遅い方には、どんな理由があろうと北アルプスは夕方以降に行動する山ではないと注意をすることにしました。
10月のある日。20時を回って到着されたお客様がいました。あまりに遅いので、我々も心配をしていたのですが、到着された際に、時間のことを注意しました。勿論、山の中ですので、道に迷ったやバテテしまったなど理由は様々です。しかし、遅くなったことに関しては、反省して頂きたいのも事実です。
このお客様にも注意をしましたが、それが納得して頂けずトラブルになりました。その方は、納得いかず、私から注意されたクレームを、環境省、松本市、長野県の各省庁に訴えられ、挙句の果てには、裁判所にまで呼ばれ事情を説明いたしました。勿論、不起訴にはなりましたが、昨年の冬は、その案件ばかりの日々を過ごしました。
そして、こんな羽目になるのであれば、今年はどんなことがあっても、注意するのは辞めようと心に決めているのも事実です。
下記のことは、遭難騒ぎになった際におこる現実です。
1 警察も遭対協も宿の人間も、遭難騒ぎがあった際、遭難者の救助よりも優先するものがあります。それは、二次遭難です。従って、悪天候や夜間には、相当な理由がない限り捜索は行われません。残された方の歯痒い姿や、やりきれず怒りに満ちた姿を、毎年目の前で見ていますが、動くことはできません。
2 捜索を行った場合、ケースによっては莫大な請求をされます。
3 我々は、山をよく知っていると思われがちですが、我々が知っているのは大自然のほんの一握りです。ましてや、三歩のようなスーパースターは、山にはいません。
この連休。いつもの年に増して、到着時間が遅くなっています。横尾山荘さんも同じ状況だそうです。
昨日は、親子3人で来られたお客様の一人が、19時を回っても到着されず、大事にならないように、我々スタッフ3人で捜索に出ました。無線を片手に必死に走り回っているそんな状況で、
「今から、上高地まで行きたいんですが、21時には着きますよね?」
とビールを片手に尋ねられた人がいました。
「夜は行動しない方がいいですよ・・・」
とだけアドバイスしました・・・。
山の上でみる光景は、救助者を助けた、助かったなどドラマチックな場面です。
しかし、ここ徳沢は、その救助を待つ家族の不安な姿や、落胆した、悲壮感漂う現実的な場面です。
夏山シーズンが始まり、夏山を盛り上げていかなければならない立場であると十分に理解してはいますが、心配でこんな文章になってしまいました。
若旦那
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