先日の緊急事態宣言を受け5月6日迄、上高地、北アルプス全体で営業を自粛するということが決まりました。
ニュースで騒がれています、自粛と補償はセットでないといけないというまさに話題の中心にいます。
上高地のみならず観光県である長野県。ゴールデンウィークは最も重要な時期で、こんな事態でも営業を行う、行わないは死活問題になりかねないところもありますので、各観光地で賛否両論があります。
しかし、この事態を重く受け止め中部山岳国立公園は全自粛という結論になったのは、この先の未来にかけた選択だったと思います。
上高地、北アルプスには何百人というスタッフたちに支えられています。その顔の見えるスタッフたちの生活と、どこまで続くか分からない自粛を受け入れるのはどこのオーナーも苦渋の選択です。
この2ヶ月。そんな選択を何度してきたことでしょう?
ニュースを見ては、よしっ自粛と腹をくくったつもりでも、ゴールデンウィーク中の予約帳を見ると殆どの方が、予約初日に申し込まれた方ばかり。そこで躊躇って明日まで決断を遅らせようと思っても、翌日ニュースを見るとやはり断念せざるを得ない…。
今は何処にぶつけていいのか分からずグッと我慢をしています。只々、無念…。
コロナと同じくらいに考えさせられてしまうことが、この先の山小屋事情です。
こんな時期ですので色々な人と電話で意見を聞く機会もたくさんあります。
SNSでは、色々な立場の方が山小屋、登山に関してそれぞれの見解を発信しています。
今の状況に山小屋はとても難しい立場だということも感じています。
えっ?では山小屋ってもう営業できないじゃん。
しかし、山小屋は半官半民みたいところがあり、その山小屋が中心となって登山道の整備が行われ、時には救助も行い、時には避難場所となり、最高のコンディションの時には最高に幸せな空間を提供できる場所です。
都会のホテルと違い、はい来年からオーナーが変わりましたってこともできません。
これは、権利とかいう問題ではありません。計算やマニュアルとかではなく、全て経験から一年間を考えられて、ここは冬に雪崩が多いからこの場所を選んだ。大雨の時に現れる水の押し出し位置や飲料水の確保など、その人たちでないと分からないことがたくさんあります。
現に、お隣の横尾山荘さんのオーナーに私がなっても小屋開けすら出来ませんし、営業の仕方も全くわかりません。
当園の立ち位置は、昔の流行語にもなりましたファジーな立ち位置だと思います。日本語にすると、ぼやけたみたいな意味になってしまいますが、旅館みたいな山小屋…。でも、洋室もあります的な…。あっあと相部屋はカプセルタイプですみたいな…。まさに、ファジーです。
でも、当園を長年支えてきてもらったのは登山者で、山小屋が無ければうちの良さも半減します。登山道がなければ、槍や穂高という山には登れません。登れる山だからこそ目標であって、魅力があると思います。
この騒ぎが終わったら山小屋問題だけではないと思いますが、世の中の常識が変わっていると思います。もしかしたら、友好の象徴である握手という文化は無くなってるかもしれませんし、靴下と同じような感覚でマスクをつけるのが当たり前になっているかもしれません。
私も山小屋の端くれとして山小屋の今後の在り方をずっと考えています。
料金を倍取って完全予約制にして欲しいとか、基本テントが主流になって、どうしてもの時にだけ山小屋を使う。山小屋を無くなっても登山道を国や県で整備しろなど様々な意見があると思います。
ぜひ、STAY HOMEのこのタイミングで皆さんの意見を聞かせてもらえたら嬉しいです。