皆さんが思い描く上高地ってどの景色ですか?
私は徳沢の草原から見た前穂と言いたいところですが、やはり上高地っていうと、穂高連邦を背に梓川が流れ込む河童橋を想像します。
あのバランスは素晴らしく、穂高の白と梓川の青。新緑の緑が映えるのを邪魔しない程度に存在感のある河童橋。
これ完璧で、日本人が上高地を思い出す時に必ず浮かびあがる日本有数の光景ですよね。
私は生まれ育った時からこの景色を眺めていて、皆さんと違った感覚があります。伝わりにくいとは思うのですが、街やテレビとかであの光景が流れるとなんか照れ臭く、商業的に見えてしまう。本当に伝えにくいのですが、当たり前過ぎて、恥ずかしくなるというか…。この感情ってなんなんでしょうか?
でも、あの景色は本当に素晴らしいと思いますし、大好きなんです。もちろん、後世まで上高地といえばあの景色を伝えていきたいのは本心でして、皆さんにもまず見てもらいたいのは、あの景色なんです。
このジレンマは、戻ってきた19年前からありまして、河童橋の絵や大きな写真を額に入れて飾るのですが、どこかベタ過ぎて建物にマッチしない。良さや雰囲気が出ない。実際に自分の目で見た景色の後なので、本物には敵わないせいなのか、直ぐに他の絵や写真に掛け替えてしまいます。
そこで、長年のモヤモヤを解消すべく海外に行ってきました。
今回、南フランストゥールーズから入り、隠れた食の都バイヨンヌを経由し、スペインバスク地方に抜けて、目的地サンセバスチャンを目指します。
サンセバスチャン以外は完全に観光で立ち寄っただけですので、久しぶりの海外を満喫。
どこを歩いても興奮しますし、どこを撮っても絵になります。
スペイン、サンセバスチャン。
前から一度は訪れたかった街なのですが、どうしてもスペインというとバルセロナやマドリード。ちょっと頑張って南のアルハンブラ宮殿というのが定番になってしまいますが、その有名都市を捨てて、サンセバスチャンに来ました。
松本市とほぼ一緒の20万人程度の港町。高級別荘やリゾートマンションが立ち並ぶヨーロッパを代表する避暑地。
そんな小さな街なんですが、世界で1番美味しい街と言われておりまして、田舎街にミシュランの星付きレストランが幾つもあります。三つ星レストランの数は、バルセロナ、マドリードよりも多い。星が無い名店もたくさんあります。世界中の美食家達が集う街です。
バルと呼ばれる居酒屋みたいなのが主流で、好きなおつまみを指さして一つ二つそれを食べる。そして、次のお店でもまた一つ二つ。梯子酒状態で何軒も回る。ワインは200円程度と安く、一軒あたり1,500円程度で回れます。
最高の夜を過ごせる街。
と、ただ美味しいものを食べて帰国したら本当に家族に怒られそうなので、言い訳を兼ねて仕事を作ってサンセバスチャンを訪問した理由があります。
サンセバスチャンは美しい海岸線を描いた、古い石作りの観光地。ラ・コンチャ湾から見える江ノ島のようなサンタクララ島がサンセバスチャンといえばこの景色という代表スポットです。まさに、上高地と言えば河童橋という場所でしょうか。
町の記念日に、サンセバスチャンでライブペインティングが催されました。ライブペインティングとは、画家が大衆の面前で絵を描くイベントです。その時描いた絵がこちら。
この絵を見た時に、全然絵には詳しく無いですし、興味もそこまで無いのですが、とても引き込まれて、その絵の題材が、スペイン人がサンセバスチャンを想像する時に必ず浮かびあがる景色だと知りました。
そこからはいつも通り、点が線でどんどん繋がっていきます。
・この人の絵が素晴らしい。
・その絵は代表的なスポットを描いているんだけど、一見しただけではわからない。
・ずっと自分の中で河童橋の絵は欲しいと思っていた。でも、ベタな絵は欲しくない。
・どうにか理由をつけて海外旅行にいきたい
あっ…この人に河童橋を書いて貰ったらいいんじゃない?スペイン行かなきゃ!
という訳でサンセバスチャンまで来てしまいました…。
色んな偶然も重なり画家で建築家のアリッツさん本人と会うことができ、通訳を通して上高地の説明をします。
風景の説明というより、河童橋の歴史や名前の由来。芥川龍之介について。カッパとはそもそもなんなんだ。
この自由な発想や歴史を絵に盛り込んで描く、日本有数の景勝地の河童橋。
この新しい価値観を具現化し、私がずっと思い悩んだ河童橋の新しい絵を手に入れる。
これが今回の旅行、いや…出張の目的でした。
皆さんが思い浮かべるこの景色。
アリッツさんにはどの様に見えたのでしょう?
4月には絵が完成し日本に送られてきます。
本当に楽しみな絵をお迎えして2023年シーズンを迎える予定です。
追記
アリッツさん。本当に無謀な訳わからない注文を快く受けて貰いました。アーティスト独特の空気感。そして何より、本当に日本が大好きで、もし飛行機代とホテル代と案内をしてくれるのなら、徳沢まで来て、キャンプ場でライブペインティングしないかとまで言って貰えました。
実現出来るかわかりませが、キャンプ場で皆さんの前でライブペインティング。
これこそ新しい観光地、山岳地の過ごし方。
新しい価値観ではないでしょうか?