徳澤園を山小屋と呼ぶか旅館と呼ぶか。よく聞かれます。私はどちらの認識でも、来ていただいた方の目的に合うのであればどちらでも構いません。140年以上ここで営業し続けられたのは、山を愛している山人の皆さんです。
ただ、徳沢の難しいのは下界の便利さと山小屋の不便さをどの案配でお客様に提供するか。例えば便利に慣れているからといって、徳澤園の玄関が自動扉になってしまったら恐らくお客様は不満に思うでしょう。
数年前から徳沢は携帯電話が使えるようになりました。山の中の静けさを味わってもらうという理由で、今さら圏外にしてしまったらこれはこれで不満に思うでしょう。
だから、ここでサービス業を行っている以上、山の中の空気感、時代にあった満足感。そしてそのバランスには人一倍気を使います。
混雑時でも、山小屋はお客様を断ることは出来ません。だから、広間で一枚の布団を何人かでシェアするというのは、山小屋はサービス業の前に、避難、安全が第一目的だからです。
畳の広間の相部屋は当園にも昨年までありました。しかし、今シーズンはプライベートスペース重視のお部屋に変わりました。
実は、全ての相部屋をこのようなスタイルに変更するにあたり、もう少しお客様から「広間で雑魚寝の方が山っぽくて良かったのに」と指摘されるのではないかと思って覚悟をしていました。しかし、そのような指摘をされることはありませんでした。
もし10年前にこのようなスタイルに変更していたら、沢山の指摘を受けていたように思います。しかし、2017年の時代はプライベートシェアルームが求められています。
プライベートシェア…。言葉としては、あべこべです…。
しかし、このあべこべ。この曖昧さ。一昔前の流行語であるファジーこそ最近の徳澤園であり、お客様から山小屋なのか旅館なのかを聞かれる元になってると思います。
実は、来年に向けて一部屋だけ改装をします。社長、女将を説得し、当園で一番ハイクラスのお部屋である洋室Bタイプのお部屋を敢えて再度改装します。
ほぼ頭の中では完成しています。イメージ画像は1月中旬にはお見せ出来ると思いますが、一部屋だけ。しかも一番ハイクラスのお部屋ですので、大胆なリニューアルになると思います。
あるお客様に山小屋の好きなところを聞いたとき、とても面白いことを言われました。
「危険な山の中の、安全なお部屋がとても新鮮なの」
この言葉が衝撃的で、ヒントをもらいました。
が、これもあべこべです。