昨年の同時期、何があったか覚えていますか?上高地土砂崩落で釜トンネルが埋まり上高地内に1000人以上が取り残されニュースにもなりました。
あの日の記憶は鮮明に覚えています。
強い雨が降り続き心配はしていました。すると、一気に停電。電話も途絶えました。状況を調べに上高地へ。上高地への唯一の入口釜トンネルが土砂で埋まったことがわかりました。幸いトンネル内に残された人はなく、胸を撫で下ろしたのですが、目の前にいる人の多さに恐ろしさを覚えたのを鮮明に覚えています。
数か月前に東日本大震災を経験したにも関わらず、電気電話のない現実はあまりにも厳しかった。
1000人分の食料、燃料の確保。電気で使えなくなったトイレの対応。水の確保すら危うかった状況の中、震災を経験した日本人は逞しかった!!上高地、北アルプスが一丸となって一人残らず無事に帰宅させようと一致団結。お客様も誰一人取り乱すこと無く乗り切った。
大震災が唯一人間に与えてくれたものは、非常の際の経験。自然はとてつもなくでかいけど、人間はそんなにやわじゃない!と思わされました。
さて、各施設でも様々なドラマがあったようです。勿論、当園でも。
あの日、上高地で現状を知って直ぐに思い浮かんだこと・・・。
「やばい・・・。キャンプ場に子供達がいっぱいいた・・・。どうしよう・・・・。」
この日、ある学校の山岳研修が行われていました。大人はもちろんだけど、子供達を絶対に被害者にしてはいけない。観光は安全であって初めて観光です。直ぐに徳沢に戻り対応に追われました。
衛星電話を使い、学校に子供は安全であることを伝えてもらいました。雨も降っていましたので館内に避難してもらい一夜を過ごしました。
子供達に不便な思いをさせ、不安にさせたことでしょう・・・。初めての子は山って何?って思ったでしょう・・。
こんな体験をさせてしまい、途中お腹でもすいたら・・・。
別れ際、女将が全員におにぎりを渡しました。お手製のでっかいおにぎりです・・・。
その後、私を含め数人のスタッフで上高地まで送り、上高地に閉じ込められた800名のお客様と下山してもらいました。
できたら・・・また山においで・・・。と願いつつ・・・。
今日
梅雨の静かなキャンプ場。元気な声が聞こえます。あの子たちです。今年も山に来てくれました。
昨年、災害を経験した子もたくさん来ました。あのとき、おいしいおにぎりもらったからと、みんなでお土産も持って来てくれました。娘におっきなお菓子です。
コンビニのきれいなおにぎりではなく、田舎のおばちゃんが握ったでっかいおにぎり。やっぱりおにぎりは愛情を一緒に握って、それは次世代の子供にもきちんと繋がるんだなって思えた苦労が吹っ切れた瞬間でした。
レポート 若旦那
あとがき
あの日、宿泊はもちろん無く、部屋は空いていました。こんな時だから、布団もいっぱいあるし館内で寝てもらおうと部屋を用意しました。しかし、屋根の下に入れてもらえただけで結構ですと、生徒達はテントからマットと寝袋を持ち出し、全員玄関の土間で寝ました。
最近の子はとか、次世代の子はとか言うけれど・・・。
山で見る子供達はどの子も、大人より強く、謙虚で、その時自分の置かれた立場を理解しています。
悲観的なニュースを見ているよりも、山に来ている子供達を見ていた方がよっぽど希望が持てます。
日本の未来は明るいです!!