みちくさブログ

山の診療所

徳沢地区には、夏季の間だけ開く山の診療所があります。日本大学医学部山岳部が何十年も前より開設し、山の診療にあたってもらっています。
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北アルプスは、こういった大学病院の医学部が各地点に診療所を設け、夏季登山者が多くなる時期に診療所を開設します。蝶ヶ岳には、名古屋市立大学。涸沢には東京大学。槍ヶ岳には、慈恵医科大学。常念には信州大学と。北アルプス登山が安心して楽しめるのには、こういった協力者が陰で支えてくださっているお陰です。

開設の過程には、高度で体調が変わりやすい山の中で、助けられる命があるのなら救ってあげたいというボランティア精神で各大学病院が開設に協力してくれました。いつ来るかわからない患者を待ち、心付け程度の診察料しかもらわない訳で、勿論そこで商売が成り立つわけもありません。ドクターも、医学部山岳部のOBが中心となり、自分たちの休日を返上し、山の中で待機してもらっています。現役の学生さん達は、ここで現場を学び、ボランティア精神の大切さを学んでいるようです。

救急車を呼んでも1時間以上はかかる僻地で、初期治療が大切な状況では、ドクターが居る居ないでは心の安心だけでも価値があります。将来のお医者さんの学生さんも一生懸命サポートをしています。

この時期売店で大量に飲物やお菓子を買っていくお客様がいます。話を聞くと、「隣で診断してもらって親切にして貰ったんだけど、お礼をもらってくれないから学生さんたちにせめて差し入れと思って・・・」という姿は、ほのぼのする光景です。

先日、当園にこんな方が来られました。「蝶ヶ岳から降りて来たんだけど、もう足が痛いから車で送ってくれ。お礼はするから。」こういった方は、多いのですが、いつも通り日大の診療所を紹介し、もし本当に送迎が必要であれば救急車を呼んでほしい旨を伝えました。「救急車は大袈裟になるから」と日大に向かったわけですが。診療所に入るなり、すごく横暴な態度。その方は、治療をしてもらっている間も、「救急車以外で送ってもらえる方法はないか」とか「自分はマスコミ関係者だ。下界では偉いんだ」などブツブツ言っています。日大も搬送に関しては、ボランティアの学生中心ですので、救急車を要請することになっています。上高地まで車で送ってもらえないことが分かると、その方はここでできる最善の治療を受けた後、学生たちがいる前で、「おいっ。ここの病院は何にもしてくれないんだな!」と言い残しそそくさと去っていったそうです。

現状、下界でも医師不足が囁かれいます。ドクターの確保や維持費の問題など山の診療所の運営にはたくさんの困難が続いています。現状を維持できているのには、休日返上で働いているドクターのボランティア精神とそれを次世代にも残したいという熱い想いの学生たちだけで開設されています。その話を聞き、次世代の学生たちの前で、大人が恩を仇で返す言い草に、腹がたってしょうがありません。日本にボランティア文化が根付かないのはこんな現状があるからではないのでしょうか?

各場所にある診療所。設備は満足ではありませんが、その存在こそが多くの人を救っています。そして、万人に安心という最高の投薬もしてくれています。もし、皆さん立ち寄ることがありましたら声をかけてあげて下さい。

レポート 若旦那

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