みちくさブログ

奥又白池

前穂四峰直下にある奥又白池。知る人ぞ知るその幻の池は北アルプスの瞳とも言われています。当園とも、繋がりが深く名作氷壁にも登場します。しかし、その幻の池を拝むまでには、各所の難所が存在し、獣道のような踏み跡を垂直によじ登らねばなりません。

9月11日より2泊3日で「徳澤園主と行く奥又白池ツアー」を行いました。数年に一度行うツアーですが、人気が高く今年も早々に満席となりました。社長の年齢(60歳)を考え今年が最後だと気合も入っています。

さて、11日快晴の中参加者が次々と当園に集結します。8月中旬よりほとんど雨が降らず、穏やかな天気が1か月ほど続いた上高地。しかし、なぜなぜどうして、明日だけ雨の予報です。今年は、ここ一番で天気に裏切られます・・・・。

その夜、ラウンジにて参加者に対してミーティングを行いました。今回の奥又白池。幻の池を拝むまでは、困難な道が続きます。ましてや雨では、そこにたどり着くことはできません。連れていけるかわからない状況でのミーティング。素晴らしさを強調しておいて中止を余儀なくされた時のことを考えると胸が痛くなります。恐る恐る天気を調べると、70パーセントだった降水確率も90パーセントに上がっています。

翌日、カーテンをかける必要もありません・・・。強く屋根を打ち付ける雨の音がします。同行するガイドと小雨でも中止を決めていたので後はどうお客様に説明をするかだけです。

空を見上げると絶望的な空模様。一筋の光と言えば明日は快晴の予報だけ。交通費を使い、休暇を奥又のために使って頂いたお客様。私にできることは、お客様にいくつかの選択肢を用意して決めて頂くことだけが我々にできる唯一のことでした。

1 今日そのまま解散
2 奥又の入口まで行って今日解散
3 参加者の都合がつけば、明日奥又を目指す

勿論、週末を利用したからこそ参加できたお客様も多数いらっしゃいました。明日100パーセント晴れる確証はありません。しかし、参加者のほとんどの方が、3を選択。皆さんの奥又白池への憧れの強さをひしひしと感じます。幻の池を幻のままで終わらせてはならない。後、私のできること。祈る。ひたすら祈る。何がなんでも明日、晴れさせなければなりません。祈る・。祈る・・。祈る・・・。

翌朝、願いが通じました。大抵、明日の天気が気になる日はほとんど寝れません。今回も例外なく寝不足です。しかし、気持ちも晴れ晴れした、あたかも自分がやってのけた達成感に満ち溢れた寝不足です!!今日は、参加者の皆さんに笑顔で目を見て話せそうです。

朝7時半。徳沢を出発。朝の挨拶では、ガイドさんからの厳しい言葉も飛びます。やはり、一般道ではない登山道。慎重に慎重を重ねても足りないくらいの道ですので。

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歩き始めの1時間はウォーミングアップに丁度いい道が続きます。いい天気に恵まれ、社長の足取りも口も弾みます。いよいよ奥又入口です。ここから、30分がいきなりすごい道へと変貌します。ここを見て、幻が幻のままで終わらせた人もいたことでしょう。大石を何度もよじ登ります。並んで歩いていても、前の人のお尻が自分の顔の前にある感じです。

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自分の足は短かすぎると痛いほど実感します。唯一の喜びは、一気に高度を稼げていること。ほぼ、垂直に近い大石をよじ登ることで、普通の登山道では考えられない速さで高度を稼ぎます。下に見える梓川が、どんどん遠ざかっていきます。

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前穂がどんどん近付いてきます。遠目には、切り立った岩場の前穂が、実は、独特の木や草が生い茂った生きた山だと感じます。

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参加者の顔も、先ほどまでの余裕は消えています。昨日、雨での山行は無理だと言った言葉に納得して頂けたと思います。その後は、切り立った道をトラバースしたり、笹をくぐり抜けたり、全身をフルに使った登山です。ここまで来たら、引き返すも登るもどちらが楽なのかわからなくなります。下ってきた登山者が、「あとちょっと。がんばって。」と声をかけてくれます。みんなその言葉に騙されますが、下ってきた登山者の「あとちょっと」は、あとちょっとだった試しがありません・・・。最後の休憩をすまし、最後の登り。池が見えるどころか、その雰囲気すらありません。

奥又白池が幻だと言われる所以。それは、最後の一歩を踏みしめた瞬間に池が広がる。ゴールテープが見えないまま進み、ゴールした時にゴールテープを切っている感覚でしょうか。すぐ上には、それぞれ特徴ある前穂の峰々が連なり、すぐ下には、梓川が上流から下流まで一望でき、その先には富士山も拝めます。なぜ、ここに池があるのか。なぜ、2400mの標高で湧水が絶え間なく溢れ池を作っているのか。この池には生物は住んでいるのか。どのくらいの深さなのか。わからないことだらけです。だからこそその意外性・神秘性に感動し、幻の池は誰からも干渉されることなく幻である所以ではないのでしょうか?

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参加者は大喜びです。この景色をみせてあげたい。それを達成させてあげた社長も鼻高々です。

誰かに話したい場所。奥又白池

誰にも教えたくない場所。奥又白池

そんなところが奥又白池ではないのでしょうか?

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さて、登ってきたからには、下らなければなりません。登りの数倍大変なのが下り。個人差がものすごく出る下山。安全に下山できてこそいい思い出。登り以上に神経を使います。すぐに、下山が困難な人はわかります。その方には私とガイドでサポートに入ります。腰に落下防止のザイルを付け、手を握り山道を下ります。私は、一人の女性を完全サポート。手を握っては、離し。そしてまた、さらに強く握り返す。幻のような3時間。最近は、嫁の手も握ったことがないのに、手の指紋がわかり合うくらい握りしめ合いました。ただ、母親と同じくらいのお客様でしたが・・・。

レポート 若旦那

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