みちくさブログ

残されたもの

上高地も15日の閉山祭をもってバスの運行が無くなります。
その後は、人間もほとんどいなくなり自然本来の姿に戻ります。
しかし、自然は都合よく人間のように寒い冬が来るので下界に降りる訳にはいかず、上高地に留まります。
木。草。動物。魚。
同じ生き物ですが、やはり動物、魚などはこれから先の過酷な状況を考えると、心配になります。

明神より上流の梓川は、秋の終りになるとどんどん水かさが減っていきます。
その年の雨の量にもよりますが、11月中には枯れて、梓川は無くなります。

081110-1

(明神以降は六百沢から流れる川が途切れない為、水かさは減りますが、川が存在します)
そこで暮らす岩魚たちは、その水量の変化に反応し、年中水のある明神池や枯れない川に避難を始める訳ですが、逃げ遅れた岩魚は、途切れたことによってできた水たまりに残されます。
河原には毎年、多数の水たまりが存在し、その水たまりを覗くと沢山の岩魚が逃げ遅れています。
今年生まれたであろう稚魚も沢山います。
日に日に小さくなっていく水たまり。
逃げ場を失った岩魚を思うと痛ためない気持になります。

081110-2

しかし、その周りには、これから厳しい冬を迎えるにあたって、栄養を蓄えなければならない他の動物が集まります。
キツネ、クマ、テン・・・
彼らが、この状況にならなければ上の動物たちが冬を越すことができません。
水が干上がる頃には、例外なく岩魚の姿は一匹もありません。
厳しい自然の摂理です。

全く、状況が異なった動物もいます。
猿です。
シーズン中。
あらゆる場所で、自由に闊歩する猿の姿を目にします。
ここ数年、我々でも違いが分かるくらい人間を恐れなくなりました。
バスターミナル周辺では、人がいても気にもしません。
人間から食べ物をもらえるからです。
確かに、子猿はかわいい。
猿も食べ物をもらうと愛想よく人前で食べます。

しかし、冬には人が来ません。
来ても、冬の食料は猿に与えるほどの余裕はありません。

前に、猿を研究している先生に伺いましたが、今の猿は生まれた時から人に食べ物を与えられた世代に変わりつつあるそうです。
従って、数も増えました。
但し、自然の中で自分で何を食べられるのか分からない猿もいるそうです。

自分が、冬に上高地に行くとヨロヨロと寄ってくる猿もいます。
木で寒さに震えながら身動きを取れない猿にも出会います。
こんな猿を見ると、恐らくこれから訪れる死に対して、取り残された岩魚とは、また異なった気持になります。

環境省を始め当園でも、動物に餌を与えないでくださいと呼びかけています。
猿監視中というワッペンをつけて石を投げて山に帰すことも推奨しています。
しかし、なかなか効果があがっているとは思えません。
そのことによって起きている現実を見る頃には、人間はここにはいないからだと思います。
餌を投げてやるよりも石を投げてあげる方が、やさしい人間だと痛感する季節です。

レポート 若旦那

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