
2008年11月10日
上高地も15日の閉山祭をもってバスの運行が無くなります。
その後は、人間もほとんどいなくなり自然本来の姿に戻ります。
しかし、自然は都合よく人間のように寒い冬が来るので下界に降りる訳にはいかず、上高地に留まります。
木。草。動物。魚。
同じ生き物ですが、やはり動物、魚などはこれから先の過酷な状況を考えると、心配になります。
明神より上流の梓川は、秋の終りになるとどんどん水かさが減っていきます。
その年の雨の量にもよりますが、11月中には枯れて、梓川は無くなります。

(明神以降は六百沢から流れる川が途切れない為、水かさは減りますが、川が存在します)
そこで暮らす岩魚たちは、その水量の変化に反応し、年中水のある明神池や枯れない川に避難を始める訳ですが、逃げ遅れた岩魚は、途切れたことによってできた水たまりに残されます。
河原には毎年、多数の水たまりが存在し、その水たまりを覗くと沢山の岩魚が逃げ遅れています。
今年生まれたであろう稚魚も沢山います。
日に日に小さくなっていく水たまり。
逃げ場を失った岩魚を思うと痛ためない気持になります。

しかし、その周りには、これから厳しい冬を迎えるにあたって、栄養を蓄えなければならない他の動物が集まります。
キツネ、クマ、テン・・・
彼らが、この状況にならなければ上の動物たちが冬を越すことができません。
水が干上がる頃には、例外なく岩魚の姿は一匹もありません。
厳しい自然の摂理です。
全く、状況が異なった動物もいます。
猿です。
シーズン中。
あらゆる場所で、自由に闊歩する猿の姿を目にします。
ここ数年、我々でも違いが分かるくらい人間を恐れなくなりました。
バスターミナル周辺では、人がいても気にもしません。
人間から食べ物をもらえるからです。
確かに、子猿はかわいい。
猿も食べ物をもらうと愛想よく人前で食べます。
しかし、冬には人が来ません。
来ても、冬の食料は猿に与えるほどの余裕はありません。
前に、猿を研究している先生に伺いましたが、今の猿は生まれた時から人に食べ物を与えられた世代に変わりつつあるそうです。
従って、数も増えました。
但し、自然の中で自分で何を食べられるのか分からない猿もいるそうです。
自分が、冬に上高地に行くとヨロヨロと寄ってくる猿もいます。
木で寒さに震えながら身動きを取れない猿にも出会います。
こんな猿を見ると、恐らくこれから訪れる死に対して、取り残された岩魚とは、また異なった気持になります。
環境省を始め当園でも、動物に餌を与えないでくださいと呼びかけています。
猿監視中というワッペンをつけて石を投げて山に帰すことも推奨しています。
しかし、なかなか効果があがっているとは思えません。
そのことによって起きている現実を見る頃には、人間はここにはいないからだと思います。
餌を投げてやるよりも石を投げてあげる方が、やさしい人間だと痛感する季節です。
レポート 若旦那
2008年11月07日

11月5日今シーズンの仕事がすべて終わりました。
それと同時に半年間一緒に頑張ってきた2008年ファミリー共お別れです。
毎年、この時期は徳沢との別れ。
前穂との別れ。
そして、スタッフとの別れは、半年間山の中で共に頑張ってきたこともあり淋しさも一塩です。
従業員の方々へ
今年もあっという間に半年が過ぎました。
昨日オバマ新大統領が当選したテレビを見ながら、そういえば半年前にオバマとヒラリーが選挙をしている頃、今年はどんな子達で徳沢ファミリーを築いていくのか楽しみにしていた事を思いました。
4月みんな緊張していましたね。
それ以上に、私が緊張していましたけど・・・
でも、揃った全員に笑顔で「よろしくお願いします」と言われた時に、今年も大丈夫!!
採用した自分の目に間違いはないと確信していました。
女将は厳しい人です。
わが子を怒ると同じ勢いで皆さんを怒ります。
でも、2つの理由があるんです。
1つ目。
”真剣だから。”
いつも、言います。
850円のカレーを売ったら1,000円分の価値を与えなければならない。
9,450円で泊ったら、ここにその値段で泊って得をしたと思わせなければならない。
お客様からお金を頂くというのはそういうこと。
趣味程度の覚悟では、お金は頂けない。
だから、その価値がない物、態度、気持ちには怒ります。
2つ目。
”親だから”
大切なお子様をお預かりする以上、全員が我が子だと思い、親代わりになって皆さんを育てます。
徳澤園を辞めて、他に働いた際に恥をかかないように怒ります。
時には、他人が入っていけないプライベートなことにも、ズカズカ入り意見します。
食べ方。挨拶の仕方。恋愛。完全に仕事の範囲を超えています・・・
でも、皆さんのご両親だったら、同じく注意すると思います。
怒る姿を見て、毎年フロントでは社長と一緒にヤキモキします。
今の世の中、他人に怒られることがほとんどない現代で、この子たちにその抵抗力はないといつも心配しています。
「おいっ。そんなに怒ったらこの子辞めちゃうぞ」などと考えながら。
でも、私が知っている限りでは、女将に怒られて辞めた従業員はまだいません。
私は、恥ずかしがり屋の為、皆さんのいいところをわかっていながら口にできません。
でも、皆さんにはそれぞれいいところがいっぱいあります。
勉強させられるところがたくさんあります。
助けられた場面が何度もあります。
水ちゃん 豊富な知識と冷静な判断。私の右腕。
白井 履歴書の長所に”頭がいい”と一番はじめに書いてありました。次回の履歴書にも書いて下さい。
デンガナ 笑いがすべて。でも、笑いがすべてかもって思いました。
アキ 自分が従業員に対して注意しにくいことは、よくアキに愚痴ります。翌日には、それは治っています。
さわちゃん ものは言いません。行動で示します。
大友 自分が気になる些細なこと。気になって見に行くと、必ずその場所には、同じことを考えて来た大友がいます。
ケイコ お客様が若い子が一生懸命雑巾片手に掃除する姿に感動します。そのお客様が必ず言うこと‘黒髪で色の白い女の子が・・”
ちーちゃん 年下をまとめる力。輪を崩さないポディション。奢らない性格。ちーちゃんに感謝した回数が数えられません。
まみ 自分より人の為に。気持で行動できる人。
岸ちゃん すべてそつなくこなす子。任せられる子。
麻ちゃん 困った人、忙しい場所には必ずあなたが笑顔で通りかかります。
関ちゃん 正直すぐ挫折しちゃうと思っていました。一番怒られました。徳沢を嫌いになってしまうと思っていました。でも、別れる際に一番泣いていたのはあなたでした。安心しました。
徳沢は皆さんが、怒られ、ヘトヘトになりなりながらも、一生懸命育った故郷です。
冷たい上高地の水に手をカサカサにしながら綺麗に掃除した宿です。
いつでも我々は奥上高地でお待ちしています。
半年間お疲れ様でした。
ありがとう
専務
2008年11月07日
11月3日の宿泊をもちまして今シーズンの営業が終了しました。
すっかり人気のなくなった徳沢。
気には、葉っぱもほとんどありません。
草は、薄茶色になっています。
川の水もいつの間にか枯れています。
我々は、極寒の冬に備えた準備に取り掛かります。
まずは、戸板。
雪に耐えるのはもちろんですが、冬の冷たく激しい風から宿を守るため、すべての窓に戸板を張っていきます。
冬の大敵。
それは、水です。
厨房では、食器の水取りをしなければなりません。
食器に、一滴でも水が残っているとそれが凍り、食器が割れてしまいます。
従って、急須の注ぎ口までしっかりと拭き取り乾かします。
もちろん、花瓶の中、お風呂の浴槽、トイレの便器までもすべて水気を飛ばします。
厄介なのは、水道管の中。
全部でいくつあるかわからない蛇口を開き、それに連結している水道管のドレンと呼ばれる水抜き用弁を開いて回ります。
宿、全体を覆うように水道管が張り巡らされているので、設計図と格闘しながら行います。
忘れたり、手抜きをすると間違いなく春に破裂しているので、神経をヤキモキしながら・・
あっと言う間の半年間。
お世話になった建物に感謝し、マイナス15度の世界に負けないように祈りながら建物を後にしました。
レポート 若旦那
2008年11月01日

Lady's Teamの冬支度恒例行事といえば「お菜とり」&「お菜洗い」。
この地方では野沢菜のことを「お菜」と呼びます。
昔から欠かせない大切な食材だったのでしょう。そして私達の宿でも欠かせない大切な存在なのです。
自家菜園にて夏にまいた野沢菜を冬前に収穫し、寒い寒い冬の間樽に漬けこむ。
そして翌年、野沢菜漬けや野沢菜チャーハンとしてお客様の前に登場するのです。
まずは1日かけて自家菜園での収穫です!
畑仕事となると行きたい!行きたい!というスタッフが多いのですが、そんな生半可なものではありません・・。
実際にやってみるとかなりの重労働です。
中腰での作業が大半なので腰は痛くなるし、日が出ていれば日焼けもします。
午後になれば寒さとの戦いもはじまります。
そんなこんなで収穫した野沢菜を約10キロで一束にし、トラックに乗せ、徳沢へと運びます。
今年は約50束!
おいしそうなお菜が獲れました。
最後は落ち葉たちを空になった畑にまき、来年の肥やしとして終了です。
さて、自家菜園から運ばれた野沢菜を一晩軒下に広げて風にあて、
翌日は第2部、「お菜洗い」。舞台は徳澤園裏庭です。
大きな桶でお菜をどんどん洗い、女将の指導のもと樽に漬けていきます。
上下雨合羽に長靴が必須アイテム。
このお菜洗いは手馴れた2年目以上のスタッフが中心となります。
天気予報は晴れだったのに、小雨が降るし木枯らしも吹いて寒い寒い寒い・・・。
鼻水と格闘しながらのこの作業もすべてはお客様の「おいしい」の一言の為。
今年も無事終了しました。
過去の徳澤園のアルバムを見ると、今と変わらぬお菜洗いの光景がカメラに収められていました。
時代は変わっても、この「お菜行事」は変わらずに続けてゆくものでありたい。
いつもそう思う秋の終りです。
この一大作業が終わるといよいよ下山!
開放感と同時に共に半年を過ごしたチームの解散に名残惜しさも覚えます。
今朝は徳沢にもついに雪がちらつきました。
あと数日。
今年度最後のお客様をお見送りするまで、一生懸命がんばります。
レポート 若女将
2008年11月01日
いよいよ、今シーズンの営業も残すところ数日となってきました。
山を見ると、一面雪化粧をし徳沢にも天気次第では雪が散らつきそうな感じです。
さて、我々は下山の準備を始めなければならない時期にきました。
下山日に、鍵を閉めてさぁまた来年という訳にはいきませんので、
冬支度は最後の大仕事です。
この冬支度の前に行う男女各恒例行事があります。
まずは、Men’s Team!
何よりもまず先にやらなければならないこと。
それは、水場の撤去です。
当園の水確保は、2種類あります。
1つは、井戸水。
おいしい地下水をポンプで汲み上げています。
こちらは、大したメンテナンスも無く、とても便利です。
もう1つは、沢水。
山の上の源流から、当園まで大きなバケツとホースを使い引っ張ってきています。
こちらのメンテナンスはとても大変です。
飲料にも使われますので、流れている川の水を引いてくる訳にもいかず、源流口に大きなバケツを備え付け、それをホースで当園まで引いてくる。
その距離2キロ。
ホースと言っても家庭で使うものとは違い、途中木などが倒れてきても耐え切れる頑丈なもの。
また、その源流というのが、切り立った岩の上にある。
そこに大きなバケツを備え付けてあるのだから・・・
際立った、急斜面にあるため、冬は雪崩の巣。
大きなバケツだろうが、ホースだろうが一気に持ってかれます。
従って、雪が降る前に撤去しておかなければなりません。
命綱をつけ、バケツを雪崩の来ない場所(大きな木の根元)に移動します。
そこに、ロープを何十にも括りつけます。
また、1本100キロ以上あるホースは、一本一本を分解し、雪に埋もれない場所に移動します。
ここに、戻ってきた当初(4年前)。
あまりに手間がかかり効率が悪いので、もっと簡単な方法が絶対あると思っていました。
何で、こんな山の上に設置しなければならないの?
ホースは来年も据え付けるのだから、このまま春まで置いておけばいいのではないか??
作業をしてわかった事。
”先人の教え”ではないですが、長年培われたこの方法が一番効率がよいものだと理解しました。
何で、こんな山の上に設置しなければならないの?
それは、急な傾斜を使わなければ、2キロ先の当園までは水はやってきません。
ホースは来年も据え付けるのだから、このまま春まで置いておけばいいのではないか??
それは、春になって水を引いてくる際、ホースが破けたり、ホースの中で水が凍っていた場合、雪が溶けるまで使えず、春の営業ができない。
水場での社長の口癖
”秋に楽すれば、春に苦労する”
当園の歴史は100年以上になりますが、先人が何度も失敗し、その都度新しいことに挑戦してきた。
人間にとって必要不可欠な水の確保。
すなわち、当園の歴史の縮図がこの水場です。
レポート 若旦那